Honey and Pepper 短編④

発信先が番号のみで表示されていた。

どきっとした。

このエリアコードは、、、彼だ。

私が住んでいる町から離れたところに住んでいる彼、電話番号のエリアコードが違うのだ。

今出なきゃ。

意を決して、電話に出た。

あまりに久々の電話にお互いぎこちない会話から始まった。

なんで電話してきたの?

彼が聞いてきた。

色んな嘘をつくこともできた。

でも、自分の気持ちに正直になると決めた手前、

素直に

あなたと話したかったの。

と言った。

電話ありがとう。彼は言った。

今マイアミにいる、今から家にかえるんだ。

じゃあ途中ここに寄ってよ。

何の為に?

私に会いに。

半分冗談のような言葉たちは口から踊るように飛び出てきた。

今、付き合っている人がいるんだよね。

予想外の答えに、一瞬時間が止まったようだった。

あんなに”付き合う”ことに抵抗していた彼だったのに‥

そうなんだ。じゃあいいよ。

私の心は悲しさを感じないよう緊急装置が作動したみたいだった。

口からはあまりにもサラッと乾燥したような言葉が出てきた。

彼はその答えに少し不服気味で

なんでそんな言い方なの?

と言ってきた。

よかったじゃん。あなたが愛を自分自身の中に見つけられて、

幸せそうだよかったわ。

今の私が今できる最大限の彼を祝福する言葉と声のトーンで言い直した。

彼は当たり障りのない質問を何点かした。

私も当たり障りのない範囲での近況報告をした。

何気ない会話

の中にある心と心が優しい毛糸で繋がっている感覚に

ホッと安心している私が居た。

久々の会話に少し緊張しつつも、この心地いい安心感に浸っていた。

フと我に返った瞬間、急に眠たくなってきてしまった。

ねぇ、なんだか急に眠たくなってきたからもう電話切るね。

彼は、今から寝るの?と

唐突に出た私の言葉に反応しながら

電話はいつでもしてきてくれていいからね。ありがとうね。

と優しさを添えた言葉で締めくくってくれた。

電話を切ったあと私の心はほわんと暖かいピンク色でやさしく包まれた気分だった。

きっと私から連絡することはこの先ないだろう、と切ない気持ちまじりに

彼の幸せを小さな心いっぱいに願った。

今日見た2つのハートが宙(そら)で繋がっているように

きっとどこかで私たちの心も繋がってるといいなと淡い希望も胸に秘めて。

-完-

Honey and Pepper 短編③

海までの道、雨が降ったり止んだり。向こうの空は晴れていたり、曇っていたり、不思議な天気だった。

それにしても、車の窓いっぱいに広がるだだっ広い沼地と空のコントラストを見ているだけでとても気分がよかった。

ふと右側の空を見ると横向きのハート型の雲がぽわっと幸せそうに浮かんでいるのが見えた。

なんだか私まで幸せな気分になった。

灯台近くの駐車場に車を止めた。

砂浜の感触を楽しみながら、防波堤まで歩いた。

綺麗な空や波の音を見たり聞いたり防波堤で子供みたいに遊んでみたり

五感をフルに使って”今、この瞬間”を思う存分感じて楽しんでいる自分がいた。

砂の感触、岩の感触、水の少し塩っぽいさらさらした感覚を足でいっぱいに感じ取った。

波打ち際で走り回る子供達、リラックスしている人々

自然はいつもやさしくて偉大だ。

そんな自然が大好き。

日もだんだん落ちてきて、穏やかな海と淡いピンク、紫、ブルー、の空、力強いオレンジ色の夕陽。

夕日の雲の中にかわいいハートをまた見つけた。

天使のサインかな。

360度どこを見ても美しかった。

潮風がだんだん寒くなってきたころ、そろそろ帰ろうとしていた。

ん?

ポケットの太ももあたりに入れたケータイから

振動を感じたような気がした。

Honey and Pepper 短編②

プルルル……プルルル……….

2、3回着信音がなったが

やっぱりダメ!

心臓が鼓動を打っているのを感じた。

すぐに電話を切った。

そのあともしばらく心臓の鼓動がおさまらなかった。

どうにか自分を落ち着かせようと

お茶を飲んだり、掃除をしたりした。

彼から掛け直しの電話もかかってこない。

そうだよね。きっと彼はもう忘れてしまった。

私のこと気にしてないよね。

そう思うと頬に熱い何かがつたい流れた。

まだこんなに好きだったんだ。

いても経ってもいられず、

気分転換に太陽光を浴びに海へ出かけた。

Honey and Pepper 短編①

最後の連絡から7ヶ月くらい経った。

彼は元気にしているだろうか。私のことはまだ覚えてるのかな。

心から大好きだった片思いの彼は未だまだ忘れられない。

私の胸に納まりきらない程の愛おしい思い出たちが

今もまだ胸の中で優しく切なく泳いでいる。

彼の煮えきらない態度にこのままじゃいけないと

私から身を引いたのは正解だったのかそうじゃなかったのか

誰にも答えがわからないゲームをしているようだった。

何度も夢にでてきては

他に女の子がいるからとそっちの方へ行っていた。わたしは少し悲しい気持ちを抑えながらも、私の道を歩いてゆく夢を2回ほど見た。

他にも関わった男の人は何人かいるのに

私の夢に出てくるのはいつも彼なのだ。

このままきっぱり終わってしまうのだろうか。

あの時に感じた感情は何だったんだろう。

そう何度も思った。

抑えきれない感情が日々積もっていた。

かわいい思い出たちに浸って抜けられない私がいた。

なんの為にここに居るの?

私はどうしたいの?

このままでいいの?ほんとうに終わり?

友達があんなのやめときなよ、

という声ももう聞こえなくなっていた。

好きなことはとことんやり尽くす

それが私のスタイル。好きなことを追いかけてきたから

今の私がここにいる。

なら、とことん動いてみてもいいんじゃない?

もう一人の自分がそう言った。

よし、電話をかけてみよう。

定期的に連絡をとっていた頃からは1年以上経過していた。

彼の電話番号の登録は削除したが

メールはかろうじて残っていた。

そこから、おそるおそる電話をしてみた。